僕には、この街がある。

上京8年

自分の夢を実現させるため、意気揚々と上京してから8年が経ちました。社会の、そしてアートについての実情を知り、結果、今働いている職場には自分の目ざす夢が無いことを知りながらも、生活のため、将来のため、つまり、お金のために働くことになった。
とにかく人が多く、時間にとっても縛られる東京で、僕のようなマイペースな人間がやっていけるのか心配していた人もいました。今でもなんとかやっていますが、人とのやり取りには駆け引きがつきまとい、いつの間にか表情は硬く険しくなり、人との接触も拒むようになり、ストレスをたくさん抱え込み、「鉄人」とまで呼ばれた僕が体調を崩すこともしばしば出てきてしまいました。

雪と氷とネオンの街

最近は帰省しても実家に行くだけで、知人に会ったりすることも無かったので、雪まつりに合わせて「知人に会う」ために帰省することにしました。
するとどうだろう、札幌の街を歩いていると、自分でも不思議でけど表情が明るくなっていた。知らないラーメン屋に行って店主と会話しても、自然と笑顔が出ている自分に気付く。この街にいると、力むこともなく自然体でいられるのです。上京してから何度も札幌には帰っていたけれど、これほど自分の変化を感じたのは初めて。
「東京は人疲れするだろうけど、頑張って。」
そう、声をかけてくれた人がいました。ああ、僕が東京で感じていたものは人疲れだったんだ。外は氷点下だけど、とても暖かい街。

まだ帰れない

何度か、もう札幌に帰ろうかとも思いました。きっとこの街は疲れたり傷ついたときにこの街が暖かく迎えてくれる。
でも、まだ帰るわけにはいかないのです。上京してから、何一つできていない。なんとか頑張って、一旗揚げたい。去年亡くなった父も、僕が努力の末に上京し、東京で頑張っていることを誇りに思ってくれたらしい。作品を入れた年賀状を、大切に取っておいてくれてたらしい。いつかその父に天国で会ったときに、いい話しがしたいですから。

僕には、この街がある。

帰るところがあるって、とてもありがたいことなんだと、感じました。それが僕にとっては北海道、札幌。うまくいかなかったときには、この街がある。この街に帰ればいい。ダメなら帰るという「甘え」とかではなく、何かあったときには、ここでリフレッシュすればいいのだと。

2010.02.16 UP